マンション経営の意外な落とし穴とは?

マンション経営には、多くの人がつまずきやすい共通の「落とし穴」がいくつかあります。
ここでいう落とし穴とは、「初心者はつい『◯◯だろう』と思い込みがちだが、実際には××である」というふうに、勘違いしてしまいやすいポイントのことです。
マンション投資の落とし穴
どのような落とし穴があるか事前に学習しておくことで、陥りやすい失敗を未然に防ぐことができます。

具体的にどのような部分でどんな落とし穴があるのか見ていくことにしましょう。

 

◆節税目的で始めるマンション経営の落とし穴

マンション経営というと、やはり家賃収入を得るために始める方が多いのですが、中には節税目的で行っている方もいます。
以下の理由から、一般的に「マンション経営は節税になる」とされているためです。

①現金よりも不動産のほうが、相続税評価額が少なくなる。
②マンション購入にかかった費用を「減価償却費」として分割し、実際の支出を伴わない帳簿上の費用を計上して所得税額を減らせる。

たしかに、以上の2点は事実であり、マンション経営が節税に役立つ場合もあります。しかし、次のような落とし穴があるので注意しましょう。

 

・節税目的の経営でも物件の収益性は重要

節税のためにマンション経営を始めようとする方の中には「あくまで節税が目的なので、利益はそれほど上げられなくてもいい」と考えている方もいますが、これは大きな間違いです。
不動産は現金とは異なり、時間とともに朽ちていくため、
運用で利益を上げられなければ節税効果が得られても長期的には損をすることになってしまいます。

 

・「不動産の価値は時間とともに減っていく」ことを忘れずに

時間とともに建物が朽ちていく、ということは、「買ったときと同じ値段で売れることはない」という意味です。
たとえば、新築の鉄筋コンクリート造マンションを購入した場合のことを考えてみましょう。
鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年と定められていますので、その間は購入費用の一部を毎年、減価償却費として計上することで節税効果が得られます。
しかし、減価償却費の期間が終了したあとに残されるのは新築当時のマンションではなく、「築47年のマンション」です。
この間、もし運用で利益を上げられていなかったとしたら、どれだけ時間とお金を無駄にしているか簡単に想像できると思います。

 

◆「利回り」に関する理解で陥りやすい落とし穴

マンション投資の(表面)利回りは次の式によって表されます。

【マンション投資の表面利回り計算式】
年間賃料 ÷ 物件価格 × 100 = 表面利回り (%)

マンション経営に限らず、一般的に資産運用は「何より収益性が大事」と言われており、収益性を目に見える数字で表した利回りは、
重要な指標です。
従って、物件選びを行うときも利回りを基準に選ぶ方が多いですが、次のような落とし穴があるので注意しましょう。

 

・良い利回りの裏に、問題が隠れている場合がある

表面利回りの計算式を見ていただければわかる通り、「利回りの良い物件」とは、「賃料が高い割に購入価格が安い物件」のことです。
通常、賃料が高いということは、それだけ物件の質が高いということを意味します。
それなのに、なぜか安値が付けられているということは、何か問題を抱えている可能性もあるので気をつけなければいけません。

 

・問題を抱えた物件では、期待通りの利回りは得られない

「利回りの良い物件」が抱えている問題の例としては、「立地や間取りが住みにくい」、「古くてリノベーションの必要がある」といったものが考えられます。
つまり、賃料に対して購入価格が安いもっともな理由があり、結果として利回りがいいように見えているだけの可能性もあるのです。

利回りを重視するあまり、こうした物件を選んでしまうと、
思ったように入居者が集まらず表面利回りほどの利益を上げられないことも十分に考えられます。

 

◆「空室リスク」に関する落とし穴

先ほどの「利回り」の話と関連して、マンションの「空室リスク」に関する落とし穴をご紹介しましょう。

基本的にマンション投資の利回りは「各部屋が満室になった状態が続くこと」を前提に計算されます。

しかし、実際には空室が発生する場合もあるので、「空室リスク」に対する備えを準備しておかなければなりません。

 

・100%確実に空室発生を防ぐ方法はない
一般的には、次の3つの方法で「空室の発生を抑えられる」とされています。

①立地の良い物件を選ぶ
②すでに入居者がいる物件を選ぶ
③入居者募集に強い業者を選ぶ

たしかに、これらの方法を用いれば空室の発生を予防し空室リスクを一定以下に抑えられることは事実です。
ただし、100%確実に空室をゼロにする方法、すなわち「100%確実な空室リスク対策」は存在しません。
ですから、マンション経営を行う限り、空室リスクとは常に向き合っていかなければならないということを覚悟しておいてください。

 

・自力では解決できない変化や、新たなコストがかかるリスクにさらされることも

空室リスクは純粋に保有する物件の問題だけで生じるわけではありません。
たとえば、「隣接する地域で駅前の開発が始まり、入居希望者がそちらに流れてしまった」というふうに、周辺地域の環境変化で需要が激変することもあるでしょう。
また、現在の入居者がたくさんいる物件を購入しても、将来退去する可能性がまったくないわけではありません。

空室対策を行うために、新たなコストが発生する場合もあります。
たとえば、広告を作って入居者を募集するような場合は、新たな経費が必要です。
空室リスクは物件の問題だけで生じるわけではないこと、対策にもコストが必要になる場合があることを忘れないでください。

 

◆「サブリース契約」で陥りやすい落とし穴

サブリース契約とは、マンション1棟を丸ごと管理業者に貸し付け、オーナーは家賃うち一定割合の額を受け取る管理方式です。
オーナーは管理業務に手を煩わされることなく、毎月利益を受け取るだけで良いことから、サブリース契約でマンション経営を行う方も少なくありません。

一般的にサブリース契約の委託期間は10~30年程度と長いため、「長期に渡って安心して任せられる」と考える方も多いですが、
次のような落とし穴があるので注意しましょう。

 

・委託契約期間と、賃料見直しのタイミングは異なる

サブリース契約は通常、「決められたタイミングで家賃の設定額を定期的に見直す」という契約になっていることが多いです。
そして、その期間は通常2年前後と、委託期間そのものと比べて短いスパンで行われるケースが多いため気をつけてください。

マンションは年々老朽化していくため、実際にはほぼ間違いなく家賃の額は減少していきます。

 

・契約打ち切りを避けるため、やむなく家賃減額に応じるケースも

現実的に考えると、管理業者から家賃の見直しを提案されたとき、オーナーは断りにくいはずです。
「この家賃では空室が発生する恐れがあります」などと言われたら、なかなか反論しにくいのではないでしょうか。

マンションの老朽化が進んでくると、さらに収益力を維持するのが難しくなるため、
業者からリノベーションの実施を提案される場合もあります。
このときも、「リノベーションを実施しないなら契約を打ち切る」などと言われるケースもあるので注意してください。

サブリース契約は業者に依存する部分が多くなる分、オーナーは主導権を取りにくい部分があるので、
落とし穴につまずかないよう気をつけなければなりません。

 

◆「落とし穴」で失敗しないために覚えておくべき鉄則

このように、マンション投資にはさまざまな場所に「落とし穴」が潜んでいるということがお分かりいただけたかと思います。
こうした落とし穴に陥らないためには、以下のようなポイントを覚えておきましょう。

ポイントその1.実質利回りを計算する

避けられる落とし穴:
– 「節税目的」関連の落とし穴
– 「利回り」関連の落とし穴

利回りに関する落とし穴の説明でご紹介したのは、「表面利回り」の計算式でした。表面利回りは簡易的な計算には便利ですが、落とし穴を避けるためには、より実際のリターンに近い「実質利回り」を確認しておきましょう。

【実質利回りの計算式】
(年間賃料 – 諸経費) ÷ 物件価格 × 100 = 実質利回り (%)

表面利回りと実質利回りの違いは、得られる利益(賃料)から諸経費を引いている点です。諸経費とはマンションの維持管理のために必要な費用で、主に以下のものを指します。

【諸経費の内訳】
①管理費
②修繕積立金
③賃貸管理代行手数料(管理業者に支払うもの)

諸経費を含むことで、利回りはより実態に近いものとなるので、本当に運用がうまくいくのかよりシビアな視線でチェックすることが可能です。実質利回りの時点でも「十分な利益が上げられる」と判断できるのであれば、それはもはや「節税が目的のいい加減な投資」とはいえません。同様に、多少の空室リスクに晒されたとしても採算割れする心配もないでしょう。

 

ポイントその2.投資エリアの入念なリサーチ

避けられる落とし穴:
– 「利回り」関連の落とし穴
– 「空室リスク」関連の落とし穴

物件だけでなく、投資するエリアに関しても事前に入念なリサーチを行っておきましょう。
具体的には、交通の便の良さ、公共機関や商業施設の充実度、周辺の治安など物件需要に直結する情報は抑えておくべきです。
さらに、そのエリア内における「投資対象と同レベルの物件の家賃相場」は必ず抑えておきましょう。
家賃設定を行う際の参考にもなります。

これらのリサーチも実質利回りの計算と同様、経営計画をより確かなものにする効果があるため、
利回り・空室リスク関連の落とし穴を予防するのに効果的です。

 

ポイントその3.管理業者との契約内容の確認

避けられる落とし穴:
– 「サブリース契約」関連の落とし穴

サブリース契約を結ぶか否かに関わらず、オーナー自身がすべて自己管理するのでない限り、
基本的に経営するマンションの管理業務は業者に委託することになります。
従って、後々問題が発生するのを未然に防ぐためには、契約内容をよく確認し理解しておく必要があるでしょう。

◆マンション経営の落とし穴を避ける鍵は、オーナー自身の「厳しい視線」

マンション経営で落とし穴に陥ってしまう根本的な原因は、当初の想定が甘すぎることです。
ですから、実際に経営を始める前にできる限り厳しい姿勢でチェックしておくことによって、
ほとんどの落とし穴は避けて通ることができます。

安全なマンション経営を目指すのであれば、何ごとも業者任せにせず、オーナー自身が確認する「厳しい視線」が必要です。
ここでいう厳しさとは、「自分自身の行動を見つめる厳しさ」という意味。
自分自身が心から納得できるような、完璧な経営計画を立てることこそが「落とし穴」に陥らないための最も良い方法なのです。