マンション投資は、投資する物件の所有方式によって2つのやり方に分けることができます。
ひとつは、丸ごとひとつのマンションを保有する「一棟所有」。
そしてもうひとつが、特定の一部屋だけを所有する「区分保有」という方法です。
一棟所有と区分所有、それぞれのやり方には独自のメリット・デメリットがあります。
特徴が異なれば、投資するにあたって注意するべきポイントも変わってくるので、具体的にどういった点が異なっているのか学んでおきましょう。
◆マンション投資は一棟と一部屋、どっちがいい?
2つのやり方を相互比較するために、それぞれのメリット・デメリットを順番にご紹介したいと思います。
それぞれのいいところと、気をつけるべきところが理解できれば、どちらが自分にあったやり方なのか判断できるはずです。
◆一棟所有のメリット・デメリット
-メリット
1.融資を有効活用できる
不動産投資を行う際、金融機関からの融資を利用する場合があります。
このとき、保有する不動産は融資を受けるための担保としての役割を果たすため、
資産としての評価額が高い物件に投資するほうが、より多くの融資を受けることが可能です。
当たり前の話ですが、投資エリアが同じであればマンションを丸ごと一棟所有するほうが、一部屋だけを所有するのに比べて不動産評価額は高くなります。
従って、融資の借入額の規模では区分所有よりも一棟所有のほうが有利になると言えるでしょう。
2.自分一人で物件に関する決定が可能
区分所有の場合、自分がマンションの一部屋だけを保有しているのと同じように、別の部屋にはそれぞれ別のオーナーが存在することになります。
そのため、共有部分のメンテナンスなど、マンション全体に関わる決定を行う場合には、すべての所有者と意見調整を行わなければなりません。
一方、一棟所有の場合はこうした意見調整の手間は不要なので、マンション全体に影響する決定であっても自分ひとりの意思で決めることができます。
管理費や修繕積立金の増減といった決定も自分だけで決定できるため、意見調整を巡ってトラブルが起きる心配とは無縁です。
3.資産形成のスピードが速い
もし、大きな問題が起こらず運用がうまく行った場合を比較すると、一棟所有のほうが区分所有よりも資産形成のスピードが速くなります。
すでにご説明したとおり、一部屋だけを保有するよりもマンションを一棟保有したほうが、資産としての価値はより大きくなります。同じ期間の間に得られる利益の合計額も大きくなるため、資産が増えていくペースが速いのです。
「会社の規模が大きいほうが、売上総額も大きくなる」と考えればわかりやすいでしょうか。
また、利回りを比較しても、一棟所有のほうが区分所有を上回る場合が多いです。
4.空室発生時の影響が少ない
区分所有の場合、空室の発生はイコール「家賃収入がゼロになる」ことを意味しています。
保有しているのが一部屋だけなのですから当然のことです。
一棟所有であれば、空室が発生したとしてもそれは家賃収入の一部が減ることを意味するにすぎません。
「リスクを広く薄く分散できる」だと表現してもいいでしょう。
-デメリット
1.多くの初期費用が必要
一棟所有は「マンションを丸ごと」、区分所有は「マンションの一部分だけ」を所有する方式です。
投資エリアなどその他の条件が同じであれば、丸ごと購入する一棟所有のほうが、当然初期費用の負担は大きくなります。
仮に都内でマンションの一棟投資を行うのであれば、1億円以上の初期費用が必要になるケースも珍しくありません。
2.物件管理に手間がかかる
一棟所有の場合、物件管理を行う責任はオーナーに課せられます。共用部分の定期的なメンテナンスなどもすべてオーナーが自分で手配しなければなりません。
もちろん、管理業者に委託することも可能ですし、管理業務もやり方次第でコストを減らすことは可能です。
しかし、管理業務の手間がかからない区分所有に比べると、確実にオーナーの負担は増加します。
3.リスク分散ができない
区分所有の場合、「A地区のマンションを一部屋、B地区のマンションを一部屋」というふうに、複数の地域に分散して投資を行うことも可能です。
それに対して、一棟所有は複数の物件を購入する資金的な余裕がない限り、ひとつのマンション、ひとつの地域に集中して投資することになります。
災害や近隣施設の移転による入居者減少など、地域由来のリスクを分散できないため注意してください。
4.次の買い手を見つけにくい
不動産は流動性が低い、「すぐに現金化するのが難しい資産」です。さらに、その不動産というカテゴリーの中でも「一棟所有のマンション」は、最も流動性の低いものだと考えてください。
資産価値が大きいということは、それだけ買い手も少なく、購入の検討にも時間がかかるということを意味するからです。
そのため、手放したいと思っても、次の買い手が見つからずなかなか手放せないという状態に陥ってしまう可能性もあります。
◆区分所有のメリット・デメリット
-メリット
1.一棟所有より少額から始められる
一般的に、マンションの区分所有は一棟所有よりも少ない資金で始めることが可能です。
具体的な金額は地域により異なりますが、
たとえば、都内でも中古マンションの一部屋であれば1000万~2000万程度から投資を始められます。
2.共用部分の管理業務が不要
区分所有マンションでは、共用部分の管理業務は管理組合が行うため、オーナーの負担が軽減されます。
「マンション投資は行いたいが、手間が増えるのは避けたい」という方にとってはうれしいメリットでしょう。
3.地域リスクを分散できる
もし、複数の物件を区分所有する金銭的な余裕があるのなら、ひとつの地域に限定して保有するのではなく、
異なる地域の物件を買うことで地域由来のリスクを分散できます。
一棟所有よりも初期費用の金額が少なく済むため、複数所有のハードルが低いことも有利に働くのがポイントです。
4.売りたいと思ったときすぐに買い手が見つかる
区分所有は一棟所有より価格が安くなることもあって、流動性の面で優れています。たとえ同じエリアの物件であっても、
区分所有のほうが比較的早く次の買い手が見つかると考えられます。
-デメリット
1.融資を受けられる金額が少ない
金融機関からの融資を受ける場合、一棟所有に比べて資産としての価値が少なくなるため、
あまり多くの融資を受けることはできません。結果として自己資金の割合が高くなるので、
融資を活かした資産増加を目指す上では一棟所有に劣ってしまうことになるでしょう。
2.リフォームや管理の決定が自分だけではできない
区分所有の場合、たとえば、「窓枠のリフォーム」のように、共用部分に関する決定のために所有者全員の意見調整が必要です。
自分ひとりで決められる一棟所有と比べて自由度が低下することになるのを覚えておいてください。
3.利回りが低い
区分所有は、買い手の数が多いため人気の物件は価格が釣り上がりやすく、一般的に一棟マンションよりも利回りが低くなってしまいます。
一棟所有の場合、表面利回りが15~20%の物件も少なくありませんが、区分所有の場合は表面利回り5~10%程度がひとつの目安となるでしょう。
4.空室発生時の影響が大きい
区分所有の場合、運用しているのが一部屋だけだと、空室が発生したときいきなり家賃収入がゼロになってしまうことになります。
仮に2、3室保有していたとしても、やはり収入の数十%が一度になくなってしまうことになるので注意が必要です。
◆一棟所有と区分所有、それぞれどんな人に向いている?
以上のような特徴を踏まえた上で、一棟所有と区分所有、2つのやり方がどんな人に向いているのかご紹介したいと思います。
・一棟所有は、「早く資産を増やしたい人」におすすめ
投資として見た場合、一棟所有のメリットの中で最も重要なのは「資産形成のスピードが速い」ことです。
もし同一期間、同じ金額を一棟と区分所有に投資した場合、利回りの差から一棟所有のほうが最終的に得られる利益は大きくなります。
早期の資産形成を目指している方は、一棟所有でマンション投資を行う方がいいでしょう。
・区分所有ならこう運営するのがおすすめ
区分所有は投資効率では一棟所有に劣るものの、全体的に見て「リスクに対する耐性」という面では勝っているといえます。
リスクを抑えてマンション投資を始めたい人に向いているほか、「すでに一棟マンションを保有しているがリスクを分散したい」という人が一棟所有と並行して行うのもおすすめです。
◆2つのやり方を効果的に組み合わせて、効率的に投資を進めよう!
マンション投資に限らず、資産運用には必ずリスクとリターンがあります。
その点、区分所有はリスクコントロールに優れ、一棟所有はリターンの効率化に優れているといえるでしょう。
それぞれの利点をうまく組みあせて、資産形成を進めるのがマンション投資を成功させる秘訣です。