マンション投資で最も注意すべきリスクとも言えるのが「空室リスク」です。
その空室リスクに備える方法のひとつに「家賃保証」という仕組みがあります。
家賃保証とは具体的にどのようなものなのか、メリット・デメリットと利用時の注意点をご紹介しましょう。
◆家賃保証とは?
家賃保証とは、マンションに空室が発生しても一定の割合で収入を保証してくれる仕組みのことです。
一般的には、設定家賃満額の1~2割に相当する金額を不動産業者に手数料として支払うことで、残る8~9割をオーナーが受け取ります。
仮に空室が発生しても、オーナーの取り分に当たる家賃の8~9割は入居者の代わりに不動産業者が支払ってくれるので、収入が減ることはありません。
◆家賃保証のメリット
・空室リスクを避けられる
家賃保証を利用すれば、空室が発生しても収入が保証されるため、マンション経営最大のリスクである空室リスクを軽減することができます。
このことは、特に家賃収入をローンの支払いに当てている場合に効果的なメリットです。
空室が発生したとしてもローンの支払いが滞る心配はないので、安心して日常生活を送ることができるでしょう。
・業者に管理業務の大半を任せられる
一般的に、家賃保証は「一括借上(サブリース)契約」という方式に則って行われています。
一括借上(サブリース)契約とは、入居者一人ひとりとオーナーが個別に賃貸契約を結ぶのではなく、マンションを丸ごと業者に借り上げてもらう契約方式です。
この契約を選ぶと、家賃保証が得られるばかりでなく、入退去者の募集・管理や、家賃の集金、入居者同士のトラブルなど管理業務のすべてを業者に任せることができるので、オーナーの負担は大幅に軽減されます。
・確定申告の手続きが楽に
マンション投資を行う際は、毎年得られた利益を確定申告して税金を支払わなければなりません。オーナー自身がマンションの管理業務を行う場合、個々の入居者から受け取る家賃や修繕積立金、入退去時に行うハウスクリーニングの費用などを個別に計上する必要があります。
不動産オーナーなら誰でもやっている作業ではありますが、さまざまな人を相手にお金の出入りが存在するので、管理の手間が煩雑になってしまい、確定申告の書類作成にも時間がかかってしまうのが難点です。
家賃保証が受けられる一括借上(サブリース)契約では、収支が管理業者とのやり取りに一本化されるため、確定申告が容易になるというメリットがあります。
シンプルに管理業者から家賃収入をいくら受け取ったか、手数料をいくら支払ったかを記録するだけでいいので、毎年の確定申告はオーナー自身が物件を管理する場合に比べて遥かに容易になるでしょう。
◆家賃保証のデメリット
・満室時の利益が家賃保証なしの場合より劣る
すでにご説明したように、家賃保証を受ける場合は手数料として家賃の1~2割程度を業者に支払わなければなりません。
入居者の有無にかかわらず手数料の額は変わらないため、空室が発生しない満室の場合は、本来得られたはずの利益が1~2割り程度減ってしまう計算になります。
・管理会社が倒産すると、引き継ぎが問題になる
家賃保証のある一括借上契約を業者と結んでいるときに、その契約業者が倒産してしまったとしたらどうなるでしょうか?
一括借上契約では管理業務は基本的にすべて業者任せにすることになるので、オーナーは業者から管理業務を引き継がなければなりません。
引き継ぎがスムーズに済めばいいのですが、業者が雲隠れしてしまい連絡が取れなくなるなど問題が発生する場合もあります。
別の管理業者を探すにしても、すぐに適切な業者が見つかる保証もありません。
空室リスクは軽減できる家賃保証ですが、逆に「管理業者が倒産したときの引き継ぎリスク」には注意しなければならないのです。
・2~5年程度のスパンで、家賃が減額される恐れがある
一括借上契約は、一般的に10~30年程度を区切りとして契約が結ばれます。
しかし、その間家賃がまったく変わらないというわけではありません。
実際には契約終了までの期間とは別に、2~5年程度の頻度で定期的に家賃設定の見直しを行う契約にしている業者が多いです。
マンションは時間とともに老朽化していくため、設定家賃が購入時のままだと徐々に入居者を見つけるのが難しくなってしまいます。
ですから、すでに空室が発生している状態で家賃見直しのタイミングを向かえた場合、業者は家賃の減額を提案してくるはずです。
家賃の減額はオーナーにとって収入減を意味するので、基本的に応じたい人はいないはずですが、「減額に応じない場合は契約を打ち切る」といった態度を取られる可能性もあります。
◆家賃保証で気になるポイント
・家賃保証の家賃は何が基準で決まる?
すでにお伝えしてきたように、家賃保証は「入居者が支払う家賃満額のうち、1~2割を業者に手数料として支払い、残る8~9割をオーナーが受け取る」という仕組みです。そもそもの家賃設定や、業者とオーナーの利益の配分がどのような基準で決められているのか気になる方も多いでしょう。
まず、入居者が支払う家賃満額の設定方法ですが、これは通常のマンション経営と同じく、周辺相場や築年数などを基準に決められます。
多くの場合は業者から適正と思われる金額が提案され、それを元にオーナーと話し合って決めることになるでしょう。
数年ごとに行われる家賃の見直しでは、その時点での空室率や周辺相場の変化などを踏まえた上で、空室が埋まり満室になると考えられる金額を業者から提案されることになります。
また「1:9~2:8」という不動産業者とオーナーの利益配分の比率は、不動産業界全体の相場から決まっているので、どの業者と契約するにしても大きな違いが出ることはないでしょう。
・家賃保証は絶対安全?
「家賃の見直し、減額」というリスクがあるため、家賃保証といえども絶対安全というわけではありません。
少なくとも契約を結んでから数年間は問題が顕在化する可能性は低いでしょう。
その程度の短期間ではマンションの老朽化もさほど進まないため空室が発生しにくいからです。
しかし、一般に一括借上契約の契約期間は10~30年と長く、契約が長期にわたると徐々に空室が発生し、家賃見直しの必要に迫られるリスクがつきまといます。
「家賃保証」という言葉の響きから「契約期間の間、最初に契約したときの家賃が保証される」と勘違いして契約を結ぶ方も少なくありませんが、このような勘違いは非常に危険です。
実際には契約期間よりも短いスパンで家賃の見直しが行われ、契約の途中で家賃の減額が必要になる場合も多いので、この点に注意していないと思ったような収益を上げられない恐れがあります。
◆家賃保証でマンション投資を始める際の注意点
一括借上(サブリース)契約を結び、家賃保証を受ける際は、以下の点を事前によく確認しておきましょう。
① 契約期間と家賃見直しのタイミング
一括借上契約全体の期間と、家賃見直しを行うタイミングはそれぞれ異なるので、事前に確認しておく必要があります。
加えて家賃見直しの際に業者が基準とする数値(空室率、周辺マンションの相場価格など)も確かめておきましょう。
また、あらかじめ将来の減額を覚悟して「どの程度減額される可能性があるか?」、「似たようなケースで、過去どのように家賃が推移したか?」といった点を業者に質問しておくのも有効です。
② 解約の条件や管理業務引き継ぎの方法
家賃減額の交渉がまとまらない場合や、管理業者が倒産してしまった場合、解約することになる可能性もあります。
いざというときに問題が生じないよう、解約時の条件や、別の業者に管理業務を引き継ぐための流れなどを事前に確認しておきましょう。
③ 管理業者の経営状況を確認する
管理業者の倒産リスクに晒されないために、あらかじめ下調べして経営状態に問題がない業者を選んでおく必要があります。
このときに選択の基準となるのが、過去の管理戸数や直近の売上推移です。
不動産業者全体のマンション管理戸数ランキングや、売上高ランキングなどを参考にして、上位に入っている業者を選ぶようにすれば経営に問題がある業者をある程度ふるい落とすことができます。
◆まとめ
家賃保証は、空室リスクというマンション経営で最も注意するべきリスクに備えられる仕組みです。
ただし、業者も採算の取れない物件を抱えたくはないため、「家賃の見直しに応じない場合、業者側の判断で解約できる」というように、契約内容自体は業者側に有利になっているケースが多いことに注意しましょう。
契約を結ぶ際はメリットだけでなく、デメリットにも十分注意して契約するようにしてください。